第六回 東京デジタルフォローアップ官民連携連絡会議事録

更新日

令和6年3月27日(水)15:00~16:30
(オンライン開催)

1.次第

⑴東京都事業説明
 ①はじめに 東京都内におけるデジ他rデバイドの状況
 ②令和5年度デジタルデバイド事業取組実績と令和6年度実施予定について

⑵連絡会会員活動紹介
 ①特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会
 ②NPO認知症予防サポートセンター

2.議事内容

〇巻嶋デジタルサービス推進部長

 東京都デジタルサービス局デジタルサービス推進部長の巻嶋でございます。本日はお忙しい中、岩崎先生をはじめ、多くの会員の皆様にご参加いただきまして、改めて御礼申し上げます。開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
 振り返ると、令和3年10月のデジタルの日に官民連携連絡会が始まりまして、今回6回目ということでございます。これまでも様々な企業・団体の皆様にご参加いただきまして、デジタルデバイドの是正に向けた取組ですとか、あるいは先進事例の共有などを進めてきたところでございます。
 昨年度の第5回連絡会におきまして、TOKYOスマホサポーター制度の一般募集開始などについての共有させていただいたところでございますけれども、皆様方のご協力のおかげさまを持ちまして、1,000名以上の方に、サポーターとしてご登録をいただいております。今後はさらにサポーターの「活動の場」を広げていくために、都内区市町村と協同した取組を進めていきたいと考えております。 引き続きよろしくお願いします。
 さて、本日の連絡会ですけれども、令和5年度の都の取組実績や、令和6年度の取組予定、特にスマホサポーター制度や、今回新たに、高齢者QOL向上のためのデジタル活用支援の補助事業というものを作りましたので、それにつきまして共有させていただいて、会員の皆様からご意見を頂戴したいと思っております。 皆様の知見・ご経験をもとにいたしまして、事業実施に向けさらにブラッシュアップを図ってまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、今回はブロードバンドスクール協会様から「高齢者向けICT支援活動事例に関する活動」、認知症予防サポートセンター様からは「認知症の共生と予防をキーワードとした取組」についてご紹介をいただく予定がございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上、簡単ではございますが、開会のご挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

〇事務局
巻嶋部長、ありがとうございました。続きまして新たに連絡会に参画いただきました「認知症予防サポートセンター」様より一言ご挨拶をいただければと思います。松田様よろしくお願いいたします。

〇認知症予防サポートセンター 松田様
 認知症予防サポートセンター松田と申します。認知症予防サポートセンターは2003年10月に設立しました。認知症予防の普及啓発活動を行っている団体です。これまで全国の自治体などで講演会や集団認知機能検査の実施・研修などを行ってきました。活動の1つが、東京都健康長寿医療センター研究所が開発した地域型認知症予防プログラムや、このプログラムの考え方をもとに新たに開発したプログラムの普及啓発があります。このプログラムというのは、高齢者のグループ活動を通して認知症予防に効果的な生活習慣を身につけて長く活動を継続することを目指すものです。継続するためにプログラムの中で仲間づくりを行い、プログラム終了後もグループで自主化して活動を続けています。2021年に「LINEプログラム」、2022年に「ウォーキング+LINEプログラム」を開発いたしました。 いずれもプログラムの中でSNSの技術を学び、仲間同士の交流手段としてLINEを活用します。 すでに複数の自主化グループがあります。SNSの使い方を学ぶだけでなく、日常的に発信しあえる仲間づくりというものを取り入れることで、活動の継続につながり、認知症予防や地域づくりにつながると考えます。こういったプログラムがこの連絡会の趣旨につながるのでは、また広く皆様に知っていただきたいと思い入会をさせていただきました。 どうぞよろしくお願いいたします。

〇事務局
 松田様ありがとうございました。
 それでは次第に沿って進めさせていただきます。まず都が取り組むデジタルデバイド解消事業の全体につきまして、デジタルサービス局デジタルサービス推進部デジタル推進課事業推進担当課長の宮谷からご説明をさせていただきます。

〇宮谷事業推進担当課長
 東京都デジタルサービス局デジタルサービス推進部事業推進課長の宮谷と申します。よろしくお願いいたします。 東京都事業のご説明をさせていただきたく思います。
 まず東京都事業の説明に入る前に東京都内におけるデジタルデバイドの状況についてご説明をさせていただきたいと思います。
 東京都におきましては、令和5年10月~11月までの期間で、都民のスマートフォンの利用状況把握し、デジタルデバイド解消に関する施策展開の参考とするため、都民の方を対象とした「スマートフォン利用状況調査」を実施いたしました。 ここではそちらの内容の方を説明させていただきたいと思います。
 実施概要に記載があります通り、調査対象は東京都全域に住む満18歳以上の男女個人、調査方法は郵送配布を行い郵送・WEB回答の併用という形で行っております。調査期間は令和5年10月20日~11月19日の1ヶ月間、有効回収票本数につきましては1,528標本になっております。
 また、調査項目の作成にあたり、当会の会員の皆さまから頂いたご意見を参考に作成をさせていただきました。短い期間でのご依頼にも関わらずご協力いただきました皆様におかれましては、改めてこの場で御礼申し上げます。
 調査項目は以下5点のとおりであり、まず「スマートフォンの利用状況について」ということで、スマホの所有率や利用する中での困り事や利用しない理由などを調査しました。また、スマートフォン教室の利用状況や東京都事業の認知度、さらに、スマートフォンの利用スキル、例えば、電話を掛けることができるか、や、アプリのインストールができるか、といった内容や、それぞれ、人に聞きながらならできるのか、すべて自力でできるのかなど、スキル別にその利用レベルを調査いたしました。本日は、この調査で判明した主な調査結果についてご紹介したいと思います。
 まず、こちらは年代別のスマホ所有率となっています。棒グラフの青色部分がスマホを持っていない人となっており、ひと昔前と比べ、60代・70代の未所有率は減ったものの、80代以上に限定するとスマホ未所有者はまだ半数程度いることがわかります。
 次に、スマホを持っていない方に絞って、スマホを所有していない理由をお伺いしました。棒グラフの青色部分が60歳以上の回答となっています。スマホを持っていない方の母数は144名で、グラフにもある通り「必要性を感じていない」「操作や設定がわからない」「何ができるかわからない」「きっかけがない」という理由が多くなっていますが、そのうち、60歳以上がいずれも95%以上となっております。このことから、スマホを所有していない高齢者の方に向けては、スマホを持つ必要性を感じてもらうきっかけづくりや、スマホの操作や設定方法を教えてもらえる環境をつくることが必要ということがわかります。
 次に、スマホを所有している方に絞って、困ったこと、不安に思っていたことをお伺いしました。前のグラフと同じく、棒グラフの青色部分が60歳以上の回答となっています。
 スマホを持っている方の母数は1,384名、「操作や設定がわからない」「新しいアプリが入れられない」など、操作に関する困り事を挙げる方が多く、特に60歳以上の方で割合が高い結果となりました。このことから、スマホを所有されている高齢者の方に向けては、アプリのインストールなど基本操作を教えてもらえる場を作るとともに、身近な場所で使い方の相談ができる環境が必要ということがわかりました。
 本日は、お時間の都合上、その他の結果の詳細は割愛させていただきますが、都内におけるデジタルデバイドのおおまかな状況が把握できたことかと思います。
 次に、こうしたデジタルデバイドの状況を踏まえ、東京都として現在、どのような取組を行っているのか、そして、令和6年度どのような取組を実施する予定なのかについて、ご説明をさせていただきます。
 まず、令和5年度に実施した取組については、以下の4点となっております。
 1. 高齢者向けスマートフォン利用普及啓発事業
 2. 高齢者・障害者等情報格差是正モデル事業
 3. TOKYOスマホサポーター制度
 4. 高齢者のQOL向上のためのデジタル活用支援事業
 まず、「1 高齢者向けスマートフォン利用普及啓発事業」について、ご説明させていただきます。
 本事業は、主にスマホを持たない高齢者にその使い方などを教える「スマートフォン体験会」と、スマホを使用する中で発生する日常の困りごとに応じる「スマートフォン相談会」を実施するものです。

 まず、「スマートフォン体験会」の事業内容についてご説明いたします。
 体験会は教室形式で、主にスマホをお持ちでない方が、基本操作や各種アプリの活用方法などを体験し、学ぶことができるものとなっております。また、スマホをお持ちでない方に対しては、試用スマートフォンの貸出も行っています。
 主な講義内容は、基本操作、LINEやビデオ通話などのコミュニケーション、インターネットや動画などでの情報収集、キャッシュレスなどの申請・決済の4種類で、右の写真のとおり、講義中はスタッフによる操作サポートも行っております。
 開催形式には、1回コースと4回コースがあります。1回コースは、講義内容の4種類からの選択制となっており、4回コースは4回に分けて4種類すべての内容を取り扱います。特に、参加者様からは4回コースが好評でございまして、基本操作から応用編まで学習できることに加え、前回講義の復習を含め、反復学習ができるため、参加者からは、「基礎~応用までのトータルな内容でよかった」「復習することで操作を再確認でき良かった!」などの声をいただいております。

 次に、「スマートフォン相談会」の事業内容についてご説明いたします。
 相談会は、マンツーマン形式で、主にスマホをお持ちの方が、日ごろスマホを使用する中で生じた困りごとを解決するために実施するものとなっております。
 会場については集会室や会議室のほか、右の写真のとおり、役所や商業施設などの人流のあるオープンスペースでも実施いたしました。また熱中症対策に配慮の上、屋外の会場でも実施いたしました。
 主に、カメラの使い方やQRコードの読込方法、LINEの使い方等のご相談が多く、参加者の方からは、個別に自分の知りたいことを知ることができるという点で好評をいただいております。
 次に、令和6年度の本事業の実施概要についてご説明いたします。
 左側が令和5年度の参加者の方からの声となっており、右側が、これを踏まえた令和6年度の事業内容となっております。まず、令和5年度の参加者の声として、スマホの所有者が増加したこと等により、個別で相談ができる相談会のニーズが高まっていることが挙げられます。そのため、令和6年度では、相談会の実施規模を約1.5倍へ拡大することとしております。
 先ほどもご紹介したとおり、くり返し参加ができる4回コースが好評であったことから、4回コースの開催規模を拡大することしております。
 以上のような改善を加え、令和6年度は、令和6年5月上旬頃から令和7年3月上旬頃までで、体験会と相談会を合わせて3,100回実施する予定です。

 次に「2 スマートフォンを活用した障害者向けアクセシビリティ向上支援事業」について、ご説明いたします。
 東京都では、令和5年度より、視覚・聴覚障害者向けのスマートフォン体験会を開始いたしました。まずは、令和5年度事業の「視覚・聴覚障害者向けスマートフォン体験会」の概要についてご紹介いたします。視覚障害者向け体験会の概要ですが、全盲の方と弱視の方の両方を対象としており、スマートフォン未所有者の方には試用スマートフォンの貸出を行っています。
 実施内容ですが、1コースあたり定員4名で全4回、講義内容は、基本操作やSeeing AIなどの視覚障害者向けの便利なアプリの紹介です。また、基本操作の内容には画面読み上げ機能のボイスオーバーやSiriなどのアクセシビリティ機能の紹介も含まれています。また、スライド右下の教材イメージのように点字教材と教材の音声データを参加者の方に事前に送付し、体験会当日はアシスタントが参加者と1対1でサポートを行うことで参加者の方の情報保障を確保しました。
 今年度実施した、視覚障害者向け体験会の様子をご紹介いたします。スライド左側の写真のように、音声読み上げ機能を使用するため、音声が聞き取りやすいよう部屋の四隅に席を配置して実施しています。また、スライド右側の写真のように、体験会中は講師やアシスタントが参加者に寄り添ってサポートを行い、疑問の解消や操作の補助などを丁寧に行うことで、スマートフォンに不慣れな障害者の方も安心してご参加いただけるようにしております。
 このようなきめ細かなサポートを行い、体験会を実施した結果、参加者の方からは
 ・音声で操作できることがわかったからスマホを使ってみたい
 ・マンツーマンでやっていただけて良かったです
 ・楽しかったです。ボイスオーバーを使いこなしたい!
といったご好評の声を多数頂戴し、アンケートで10段階中8.8と高い満足度をいただくことができました。

 次に聴覚障害者向け体験会についてご紹介いたします。
 まず概要となりますが、こちらの体験会は聴覚に障害のある方を対象としており、スマートフォンを所有していない方には試用スマートフォンの貸出を行っています。
 実施内容となりますが、1コースあたり定員10名で全2回としており、講義内容は、基本操作と「こえとら」などの聴覚障害者向けの便利なアプリの紹介となっております。また、基本操作の内容にはアクセシビリティ機能の紹介や電話リレーサービスや遠隔手話通訳などの便利なサービスの紹介も含まれています。また、体験会の回ごとに手話通訳または要約筆記を選択できるほか、アシスタントが参加者と1対1でサポートを行うことで情報保障を確保しました。

 次に、今年度実施した聴覚障害者向け体験会の様子をご紹介いたします。
 スライド左側の写真のように、コの字型になって実施する会場もあり、ご本人だけではなく、ご家族や介助者の方も一緒に参加される回もありました。また、スライド右側の写真のように、要約筆記付きの体験会か手話通訳付きの体験会かを選択できるようにすることで、参加者のニーズに合わせた体験会を実施しました。
 こうしたサポートを行った結果、参加者の方からは
 ・スマホを色々便利に利用出来そう。
 ・要約筆記が見やすくて良かった。
 ・文字サポート・手話サポートがあり、とてもよかったです。
といったご好評の声を多数頂戴し、こちらもアンケートで10段階中8.6と高い満足度をいただきました。
 以上のように、令和5年度視覚・聴覚向け体験会の参加者の方からはご好評の声を多数頂戴しましたが、一方で参加者の声としてスライド左側に記載があるように、「体験会の終了後にどこに助けを求めていいかわからない」「体験会後もスマホを使ってみたい」「他の参加者と話す機会がほしい」といった、体験会終了後のフォローアップや個別サポートを求める声が多数寄せられました。
 そこで、こうした参加者の方のニーズに応え、令和6年度は「スマートフォンを活用した障害者向けアクセシビリティ向上支援事業」としてリニューアルすることといたしました。
 具体的には、スライド右側の改善ポイントのとおりとなります。
 1.コース終了後に、他の参加者とともに便利なスマホの活用方法やスマホに関する困りごとを共有しあう2回のフォローアップの場を設置いたします。
 2.フォローアップ中、障害者向けの便利なアプリを実際に体験できる屋内型イベントを実施いたします。
 3.参加者向けに電話とFAXで専用の回線を設置し、個別の相談受付を実施いたします。
 4.介助者がスマートフォンの利用サポートを行えるよう、介助者向けの教材を作成し配布いたします。
 このように、令和5年度の参加者の方の声を踏まえた改善をしております。なお、令和6年度事業の予定事業期間は令和6年6月頃~令和7年3月上旬頃までとなっております。

 次に「TOKYOスマホサポーター制度」について、ご説明させていただきます。
 こちらは、日頃からスマホを使い、その便利さを知る方が、スマホ操作などにお困りの高齢者の方々の困りごとの解決に一緒になって取り組むことで、身近な地域での支え合いに繋げることを目的とした取組です。スマホサポーター公式サイトに登録すると受講ができるe-ラーニング研修を修了した方が、スマホサポーターとして登録・活動できるようになっており、現在、登録いただいているスマホサポーターの方々の多くが、都主催のスマホ相談会・体験会で活躍をいただいております。当会でも立ち上げの際などにはご協力をいただき、2023年1月より事業開始しまして、2023年12月末時点では1,000名を越えるサポーターを育成することができました。
 直近の状況ですが、令和5年度は2月末時点で累計1,318名となっておりまして、令和6年度に向けても継続してサポーターの育成を続けてまいります。
 次にご紹介するのは、サポーターの活動イメージとなります。
 こちらは2023年3月に西東京市様にて開催したスマートフォン相談会の様子となります。当日参加いただいたサポーターのインタビューについてはTOKYOスマホサポーターHPにも掲載しておりますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
 また令和5年度につきましてはサポーター制度拡大に向けた制度実証を2点実施いたしました。
 1.ロールプレイング研修実証
 2.オンラインサポート実証
となります。
 ロールプレイング研修は、サポート活動に不慣れな方や活動自体に不安をお持ちの方の不安を解消するための取組となります。当日は天気も悪い中での開催となりましたが、2日間で延べ30名以上のサポーターの方々にご参加いただき、前半は講義パート、後半は2人1組となって実際の相談場面を想定したロールプレイングを実施しました。
 当日参加いただいたサポーターの方々からは
 ・サポート活動に参加する前に活動の様子を知ることができてよかった。
 ・自分が分からない内容を質問されたらどうしようと不安だったが、研修に参加してちょっと自信がついた。
 ・既にサポート活動はしているが、他の方がどういう風に回答しているか見ることができて非常に参考になったので、次の活動時に実践してみたい。
など好評をいただき、今後のサポート活動に活かしていきたいといったご意見をいただく事ができました。
 続いて実施した「オンラインサポート実証」は、島しょ部や山間部など、身近に相談者がいない方やご高齢で遠くに出かけられない方に相談の機会を提供するとともに、スマホサポーターの活躍する場をさらに広げていく取組として実施しました。当日は瑞穂町役場の方にご協力をいただき、オンラインでスマホ相談会を開催しました。サポーターは別の会場から参加し、オンライン越しに相談者様の質問を伺ってサポートを行っていただきました。当日はWEBカメラ越しにスマホの画面を共有し、操作をひとつひとつ確認しながら相談を進めていただきました。サポーターとお話をしているうちに相談者の方もだんだんと慣れてきたご様子で、オンラインでの抵抗感もなくなったとのご意見をいただく事が出来ました。
 続いて、令和6年度の目標となりますが、令和6年度についてはサポーター数1,700名を目標としております。サポーターについては引き続き募集を継続してまいりますが、それに合わせてスマホサポーターが活動するスマホ相談会等の「活動の場」強化が必要だと考えております。
 令和5年度は東京都主催のスマホ相談会や体験会が主な活動の場となっておりましたが、令和6年度はそれに加え各自治体や町会・自治会でもスマホサポーターが活躍できるよう取組開拓・拡大を行ってまいります。詳しくはスマホサポーターホームページ内の「TOKYOスマホサポーターをお願いするには」をご参照ください。

 次に「高齢者QOL向上のためのデジタル活用支援補助事業」についてご説明させていただきます。
 まず、こちらでは、令和5年度の実施状況を報告させていただきます。東京都では、都内自治体と連携し、令和5年度より、高齢者を対象にした定期相談会・スマホの相談を通した交流の場を設置いたしました。「R5事業の背景・目的」にも記載のありますとおり、多くの高齢者は生きがいやつながりを実感しているという調査結果が国の統計において公表されていることや、都が令和3年度より実施している高齢者向けスマートフォン利用普及啓発事業の体験会・相談会に参加した高齢者より、高齢者のスマホ活用促進には①定期相談会 ②反復学習ができる機会 が必要という声が多く寄せられていたことが背景としてございます。
 左下のグラフにもありますとおり、都事業スマホ相談会に参加した高齢者の方に、「困ったときにいつでも相談に行けるよう、同じ場所で定期相談会の開催があれば通いたいですか?」というアンケートを取ったところ、およそ4人に3人が定期相談会の開催を希望していることがわかりました。こうしたことから、R5年度より、都の委託事業において、都内区市で「定期相談会」と「スマホの相談を通じた交流の場」を開始しました。
 こちらでは、今年度実施した定期相談会と交流の場の様子をご紹介いたします。定期相談会が同一会場で月2回以上実施する相談会で、相談者:アドバイザーが1:1のものです。定期的に実施することで、高齢者にとって、「ここに行けばいつでもわからないことを聞ける」という環境を目指したものとなります。
 交流の場は同一会場で週1回実施するもので、相談者:アドバイザーが複数:1のものです。スマホに関する困り事への相談対応に加え、スマホ利用の動機付けや参加者間での交流促進につながるよう、健康に関するアプリや、ゲームアプリを使ったプログラムを取り入れました。参加者からは、「また来週もきて習いたい、次につなげたい」など、定期的な開催ならではの声が多数寄せられました。また、「相談相手のいない人は助かる」「ほかの参加者と交流できて楽しい」という声も多くいただいています。
 次に令和6年度の本事業の方向性のご説明です。来年度より、定期相談会及びスマホの相談を通じた交流の場を、区市町村補助事業とすることといたしました。「高齢者が身近な場所でスマホに関する定期相談会を通して交流を図り、スマホに触れるきっかけや動機づけにつなげる」という目的は、今年度、都が委託で実施した事業と変わりはありませんが、R5事業ではすべての自治体で共通のプログラムの実施となっていたところ、補助事業化することで、例えば地域通貨の使い方紹介・普及促進や、福祉施策と連携したプログラムの実施など、区市町村の実態に応じた柔軟なプログラム運営が可能になると考えております。
 予定する対象事業はスライドに記載がありますとおり、「(1)定期相談会」は高齢者を相談者とし、相談者1人につき被相談者が1人である取組のうち、同一会場で月2回以上開催する、スマホに関する定期相談会の創出に係る事業です。また「(2)スマートフォンの相談を通した交流の場」は、高齢者を相談者とし、相談者複数人につき被相談者が1人である取組のうち、同一会場で月2回以上開催する、スマホに関する困りごとの相談を通した交流の場の創出に係る事業となります。

 事業実施主体が東京都から区市町村へ移ることになりますので、より多様な規模の事業者様や団体様による参加可能性につながるのではないかと考えております。
 以上が東京都におけるデジタルデバイド事業の取組となります。以下の内容が先に説明しておりました令和6年度デジタルデバイド事業における変更点の一覧となります。

 ご説明は以上となります。

〇事務局
 宮谷課長、ありがとうございました。
 これから意見交換及び質疑応答に移ります。まずはアドバイザーの岩崎尚子教授よりご意見ご講評をいただきたく存じます。よろしくお願い致します。

〇岩崎教授(早稲田大学 岩崎尚子教授)
 早稲田大学 電子政府・自治体研究所の岩崎と申します。非常に多岐にわたる素晴らしい活動内容についてご説明いただきました。ありがとうございます。いろいろ成果があったと思います。
 まず、東京都内におけるデジタルデバイドの状況説明を伺いましたけれども、スマートフォンの利用状況調査ですが、スマホの所有率については80歳以上に限定しますと半数に満たないということで、大きな世代間格差がまだあると思っています。今後、スマホでオンライン手続が完了するという行政サービスとデジタル化が進むわけですが、実際に80代以上と申しましても、もう少し詳しいデータを精緻に取ることで、今後の対策も少し変わってくると思います。また、スマホを所有しない理由についてですが、やはり必要性を感じない方が95%という点については、我々が10年前に行った調査結果とあまり変わらず、ある程度想定内でした。ただ、以前と比べて大きく異なる点は、やはり先ほど申し上げた通り、行政手続のオンライン化が急速に増えてくるという状況にある中で、利用環境の整備と、教育機会の確保は引き続きの課題かと思います。
 こうした中で令和5年度のデジタルデバイド関連事業の取組実績については、非常に着実に進められていると拝察しております。今後は高齢者の皆様方のQOLの向上がスマホを活用させる動機やインセンティブにつながると考えています。
 スマホ体験会については所有していない方が対象で、試用スマホの貸出等が行われているということですので、先ほど所有しない理由の1つに「必要性を感じない」とおっしゃっていた、その9割の方に響く体験会につながれば良いと思います。
 サポーター制度についてですが、着実にこちらも数字が伸びていまして、1,000名まで達成されたということですので、東京都並びに区市町村の皆様方の連携の賜物と思っております。相談員やスタッフにはシニアの方もいらっしゃるということですので、素晴らしい共生プロジェクトだと思います。
 最後に今年1月に能登半島で大規模な地震が発生しまして、一部の地域では高齢化率が高く、5割を超える超高齢コミュニティがあるということでした。通信インフラの復旧にもやはり時間を要したわけですが、複層的かつ、つながるインフラ環境の整備はもちろん大前提ですが、こうしたスマホなどのツールを介して、いろいろな情報を受け取れる環境も同時に作っていく必要があると実感しております。
 東京都様のこうした取り組みが有事にも大きな力になると思いますので、これらを通じて得られた課題をフィードバックされながら、是非改善に努めていただき、継続していただきたいと思っています。以上コメントとさせていただきます。ありがとうございます。

〇事務局
 ありがとうございました。
 続きまして、会員様からご意見・ご質問をいただきたく存じます。

--質問なし--

〇事務局
 それでは次の次第へ進めさせていただきます。続きまして連絡会会員活動紹介に移ります。 ブロードバンドスクール協会様より「高齢者向けICT支援事例について」の活動紹介をご紹介いただきます。ブロードバンドスクール協会 大島様、よろしくお願いいたします。

〇ブロードバンドスクール協会 大島様
 大島眞理子と申します。私は世田谷区に住んでおりまして、老テク研究会、ハイテクではない老テクの方ですけれども、そういうボランティア研究会で30年ほど、在宅介護の支援として高齢者や障害のある方がパソコンやスマホなどの情報機器を活用することで、外出が難しくなってもご自宅や地域の福祉施設からコミュニケーションができるようにということでお手伝いをしております。
 本日は老テク研究会が会員として参加させていただいておりますブロードバンドスクール協会が3年前から行っております「インターネット防災訓練」という活動についてご紹介したいと思います。自然災害の多い日本ですので、是非皆様の地域でも実施していただければというふうに考えております。
 今お話したような「インターネット防災訓練」ですが全国各地で行っております。高齢者が参加しやすく、主催者や講師になる方の負担の少ないスマホ講座・相談会として、町会・自治会と連携して「防災」をテーマにしたスマホ講習会を2021年からご提案しております。
 このようにいろいろな場所で2020年のマークがついておりますけれど、この頃はまだコロナ等がそんなに影響が大きくなかったので対面で実施しております。
 自然災害の多い日本ということでございます。町会・自治会は、ご存知と思いますけど実は自主防災組織であるということが知られていない部分もあるのではないかと思っております。そもそも、この「インターネット防災訓練」を始めたきっかけは地域の町会・自治会の役員をしている人たちから、「自治会に若い人が参加してくれないので困った」、「このままでは町会・自治会が続けられない」というお声にどうすればいいのかなというふうに考えたことがきっかけとなっております。
 若い人たちがマンションの町会・自治会に参加しない理由は、会合に参加したり、地域の人、特に高齢者との交流が面倒くさいと思っているからではないかと思っております。SNSを使えば、簡単にできる地域のお知らせですとか、回覧板をまだ使っている地域の、うちは世田谷区ですが、回覧板が回ってきております。町会・自治会の役員の方々の多くが60歳以上、おそらく70代の方が多いのではないかと思います。携帯電話は持っているけれど、メールやSNSなど情報共有するのはできないという方が多いからではないかなと思っております。若い人からすれば、地域のイベントとか、子供のための活動に参加するのは良いことだとわかっていると思うんですけれど、ICTに馴染みのない高齢者に合わせて活動するのは難しいかなと感じている部分もあると思います。
 そこで「防災」という今や誰にとっても切実な問題をテーマとして情報共有の支援の場を広げていこうと考えたのが「インターネット防災訓練」でございます。
 こちらは第1回の時の様子でございますけれど、全国各地を結んでICT講習会というのを企画し、2021年10月から町会・自治会向けの「インターネット防災訓練」を開始して、これまで10回ほど実施しております。各地を結ぶことによってマスコミでは知り得ない現地のリアルな情報を聞くことができたのが大きなインパクトがありました。
 第1回では東日本大震災の現地の仙台市で避難所の様子を、設営運営をされた自治会の立場からお話を伺うということができました。そして実際に訓練というのは具体的にどんなことをやっているのかと言いますと、1つは「安否確認の方法」のご紹介です。
 ホームページに「インターネット防災訓練の手引き」という情報を載せまして、これをダウンロードしてどなたでも見ていただく、また使っていただくようにしております。先ほど言ったように、例えば仙台の会場と東京・原宿の会場をリモートで結んで、皆さんとお話をするといったようなことになっております。
 この安否確認の方法ですけれど、毎回練習しておりますのは、「災害伝言板の使い方」なんですね。災害時にはまず若い人でも高齢の方でもどなたでも、まず家族の安否、それからあるいは会社の同僚の安否はどうなっているんだろうというのは、まず知りたい情報だと思うのですが、災害時にはテレビで「災害用伝言ダイヤルを使いましょう」と呼びかけているんですけど、あれは電話が集中するとつながりにくくなってしまうということがあるので、「災害用伝言板」という別のシステムで、それを利用すれば黒電話でもパソコンでもスマホでも電話がつながりにくい時にも安否を確認できるというものなんです。ただ、そういうものがあるということを知らないということ、それからもし知っていても、使い方というのがなかなかシニアの方等には特に難しくて、知っていれば簡単なんですけれど、災害が起きた時に初めていざ使おうといったようなことになると、なかなか慌ててしまって動くことができないということになるので、毎回、「災害用伝言板」を体験利用できる日にちが毎月1日とか15日とか決められておりますので、あんまり長い時間がかかるものではないので、その自治会の防災訓練の時間の10分くらいを、「災害用伝言板体験日」というのがあるので、その時に練習をしていただけるようにとご提案しております。
 そういったようなことで町会・自治会は自主防災組織として大規模な災害になると、行政と連携して避難所を運営するなど、地域の人たちを支える重要な役割があるんですけれど、これは若い人たちにはそのことをあまり知られていないのが現実だと思います。こうした防災訓練の場を設けることによって高齢者にとっても、若い人にとっても、防災訓練は目的が明確で実用的でありますので、そこで情報の共有のためのICT支援を通じて、地域の人の新しいつながりが維持できることがメリットと考えております。
 こうした内容で、また第11回防災訓練を予定しております。次回11回は渋谷駅前ヒカリエから、ネットとのハイブリッドで開催を致します。よろしければ是非会場、あるいはネットでご参加いただければありがたいと思います。以上でございます。ありがとうございました。

〇事務局
 大島様ありがとうございました。
 これから意見交換及び質疑応答に移ります。まずはアドバイザーの岩崎尚子教授よりご意見ご講評をいただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

〇岩崎教授
 どうもありがとうございました。
 これまで避難訓練、防災訓練では全国で対応していなかったので、私もいろいろ啓発のために申し上げてきたのですが、今回大変勉強になりました。
 インターネット防災訓練については大事な取り組みだと思いますが、やはり平時からというより有事に資すると思います。町会・自治会が、これまで、地域のコミュニティの核を成してきたわけで、これまでお祭りですとか、地域のイベントだけではなくて、有事に備えるために大事なコミュニティだと思います。
 また、これまで我々も色々な研究調査してきた結果、やはり自然災害で孤立するのは高齢者になるというケースも多くありますので、そういった方々を一人でも多く救うための解決策につながると思っています。
 1つ参考までですが、2020年の1月からスタートしました岸田総理直轄の第33次地方制度調査会に私も委員として2年にわたって参加してまいりました。これは昨年の12月に答申の提出がされましたが、この中の一部に、自治会の役割として言及されているところがありまして、一部紹介させていただくと、デジタル技術は災害時における住民間の連絡手段の確保のみならず、平時における情報共有のためにも利用が期待できることや、デジタルを活用することで市町村から住民宛の情報を集約化することにも資することから積極的な活用が求められる。こうしたニーズに対応するために、市町村による支援も期待されるとまとめられています。ですので今は少し町会・自治会のメンバーの方々の高齢化というところも少し課題となってきているわけですが、皆様方の取り組みが、地域やシニアの皆さんを動かす原動力になることを期待したいと思っています。ありがとうございました。

〇事務局
 ありがとうございました。
 続きまして、会員様からご意見ご質問をいただきたく存じます。

--質問なし--

〇事務局
 続きまして様より「認知症の共生と予防キーワードとした取組」について活動紹介いただきます。武石様、よろしくお願いいたします。

〇認知症予防サポートセンター武石様
 認知症予防サポートセンターの武石と申します。
 認知症予防ということで、ずっとやってきているのですが、国の認知症施策として住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられることを目指す「認知症の共生と予防」というキーワードで進めております。私どもは2003年にNPO法人を立ち上げて長年取り組んできているのですが、認知症の予防には認知機能の維持向上にとって大事なのは、運動と社会参加であるということが分かってきています。
 予防に効果のあることというのは、運動の習慣化や知的な行動習慣を身につけて、さらに長くそれを続けていくということが大事になってきます。そのために地域での仲間づくりを元にグループで長く活動を続けられる内容のテキストを開発して実施してまいりました。今までウォーキング、旅行、料理、パソコンをテーマとしたプログラムを実施してきたのですが、最近は行政の手続きや行政サービスを始め、世の中のデジタル化への対応が必須ということがあり、高齢者のスマホ保有率が上がってきたこともありますので、スマホを使ったプログラムを開発いたしました。やはり興味を持っている高齢者の方も大勢いらっしゃるのですが、まだ二の足を踏んでいる方たちの背中を押すようなプログラムになっていると思います。
 もともとパソコンのプログラムを実施していることがありまして、新しい機器の操作を身に付ける方法とか、グループ作りのノウハウなどを生かして、「LINEプログラム」と「ウォーキング+LINEプログラム」という二つのテキストを作成しました。
 当センターは設立当初よりずっと一貫して、認知症予防と仲間づくりの支援ということで、今までも数多くのグループの立ち上げに関わってまいりました。ですので、たくさん立ち上げたグループ同士をつなげる取組ということもやってまいりました。そういったグループ同士をつなげるということで、地域のつながりということも生まれてきます。
 高齢者の生きがいやQOLを高めて認知症予防に留まらず、認知症になっても支える地域づくりということに繋がっていくと考えています。こういった取組をホームページや研修などを通して広める活動を行ってきています。 長年、約20年位やってきているのですが、わかってきたのは10年、15年と経ったグループというのは、メンバーの中に認知症の症状が出るということももちろんあります。70、75、80歳ぐらいから始めて、本当に10年、15年経って認知症の方が出たり、亡くなられる方が出たり、活動している方が認知症になったりということも出てきます。そんな場合でも仲間づくりということができていると自然に助け合える関係ができていますので、少しでも長く活動を続けられるようにお互いに声かけをしたり、活動内容を工夫したりといったことを当たり前のようにしています。
 こういった事例を見てきたことから、そこで始めたグループがその地域の共生につながるという実感を持っております。
 今日は新しく作りました、2つのプログラムを紹介したいと思っております。
 1つ目は「LINEプログラム」なんですけれども、2021年から練馬区で実施しております。既に複数のグループが自主化して活動を続けています。LINEを使って人と繋がり、仲間同士で交流しながら認知機能を鍛えることが目的というプログラムで、1回/2時間、全12回の内容でプログラム終了後は自主化を目指す内容になっています。
 やり方としてはテキストに沿って進めて、ファシリテーターと呼ばれるスタッフがメンバーの方を支援するという形で進めていきます。1つのグループは6~7名で進めて、同時に2グループ、3グループというふうに進めることもできます。
 テキストに沿ってインターネット検索やLINEの技術を学んで、学んだ技術を活用して仲間同士でLINE投稿をしたり、グループで街歩きなどのイベントを計画して、調べた情報をLINEで送り合うなど、目的をもってSNSが活用できます。プログラムはスマホの使い方を習うという教室ではなく、仲間同士で教え合いながら進めます。実際にメッセージを送り合う仲間がいることで、学んだことをその場で繰り返し使うことができて技術が身につきます。
 先ほど反復学習という言葉が出たかと思いますが、そういったことが自然にできていくことになります。テキストは全部で108ページあり、iPhoneの場合とAndroidの場合と、それぞれ図解でわかりやすく説明しているので、早く理解できる方はテキストを見るだけで理解いただけます。
 ファシリテーターというスタッフは、スマホやLINEの先生ということではなくて、テキストの内容を伝えて、メンバー同士の教え合いを促します。早く覚えた方が、お隣の方のスマホをみて「ここですよ」とひと声をかけていただくだけで、次に進めるという方も大勢いらっしゃいますで、そういった仲間同士の教えあいを促しながら進めていきます。
 「LINEプログラム」の中で学べる技術というのは、グループトーク、スタンプ、絵文字、メンション、それから画像や動画を送ったり、アルバム作成、ノート、ビデオ通話、ボイスメッセージ、その他設定の確認や友だちの追加、インターネット検索などにも触れています。
 LINEを使い始めて、たくさんのLINEが飛び交ってストレスになったりということがあったりします。そういったLINEのマナーみたいな話もプログラムの中に組み込んでいます。
 プログラム終了後はイベント先の情報をLINEで共有して一緒に出かけたり、定期的にビデオ通話をしているグループもあります。LINEの投稿も活発で、あるグループはオレオレ詐欺の電話がかかってきたことから、警察への相談内容から地域の防犯情報などの注意を促しあっていました。また、あるグループでは入院された方を他のメンバーがLINEで励ましたり、といったこともありました。
 自治体などでたくさん行われているスマホ講座とかLINE入門講座といったところがあると思いますが、反復学習と使う相手がいるという意味では、ステップアップ講座として、そういった入門講座から引き続いたプログラムとして本プログラムを実施するのもいいかなと思っています。
 もう1つのプログラムは、「LINEプログラム」から派生したテキストなのですけれども、「ウォーキング+LINEプログラム」ということで、私どもは20年ほど前から、ウォーキングの習慣化を目指すプログラムというのを実施してきました。認知症予防に効果的な有酸素運動として手軽に取り組めるウォーキングの習慣化を目指すものです。
 練馬区で実施した「LINEプログラム」の実績をもとに、私どもで進めてきたウォーキングプログラムを組み合わせて作ったのが「ウォーキング+LINEプログラム」です。
 内容としてはウォーキングの習慣化を目指すということで、LINEを利用することで仲間同士で交流しやすくなります。1回/2時間、全5回、プログラム終了後は自主化という流れです。これもテキストに沿って進める内容です。
 ファシリテーターという呼ばれるスタッフが支援して、LINEプログラムと同様に1グループ6~7名で複数グループで進めることも可能です。
 テキストは全部で44ページあるのですが、ウォーキングの記録をつけるページが9週間分ついています。プログラムは全5回ですので、それが終わった後もずっと記録をし、交流を続けてということで進んでいきます。内容としてウォーキングの部分ではウォーキングの記録報告をメンバー同士で行います。それから早歩き体験と言って、有酸素運動となるような早歩きを体験するような時間もとっています。それからウォーキングイベントを5回講座の中の4回目に実施するのに向けて、イベントの企画をして、どんなコースにするかということの話し合いを行います。
 LINE部分ではグループトークを中心に、写真・画像の送付とか、アルバム作成など基本的な、簡単な操作というところでLINEを使っています。
 先ほどから何度か名前が出しました「ファシリテーター」というスタッフですが、「役割と態度」というものを研修でもお伝えしています。「役割」としてはメンバーの行動変容を支援する、グループ作りを支援するというところです。行動変容を支援するというのは「ウォーキングしなかった人が歩くようになる」、「メンバー同士仲良くなるにはどういうふうに接したらいいのか」という、そのノウハウを持って対応にあたります。
 「態度」としてはわかりやすい情報提供、テキストの内容を分かりやすく伝えるということが基本です。「自己決定の尊重」というのがキーワードになっているのですが、ファシリテーターの方の期待や価値観を押し付けずに、「ご本人がどういうふうに決定するか」、「歩くときにこのぐらいの目標にしたい」というのを尊重して、それは無理じゃないかなと思っても、そこのところはご本人に任せて、次の時に「(前回は)どうでしたか?」というふうに聞いてみる、というような対応で接していきます。また適度な心理的距離が必要というのは、相手をリラックスさせグループ全体をリラックスさせることによって、仲間同士が早く仲良くなります。いつもファシリテーターが中に入って調整をしていると自主化というところを阻むことになりますので、適度な心理的距離というのを念頭に置きながら接することが求められます。
 認知症予防というと、高齢者には気になる話題になると思います。そういった健康に資する活動の入口に、地域と共に活動する仲間づくりのきっかけとなるプログラムを実施して、LINEやスマホの操作の不安を解消、新しい情報を共有する仲間ができるというところにも貢献できると思っています。スマホの操作を身に付けて活用できるようになると、近所の知り合いや友人にも便利よというふうにアピールできますので、身近な人の変化というのが周りの同年代の人たちの気持ちを動かす可能性も高いと考えています。
 ポピュレーションアプローチというやり方でやってきているのですが、変えるのが非常に難しい人を頑張って変えるというよりも、その周辺から変えていくというような考え方でしょうか。
 今までスマホを使っていなかった人が、こういったプログラムに参加して使えるようになって、「簡単なのよ」、「便利なのよ、あなたもやりなさいよ」と親しい人から声をかけられることで「じゃあ私もやってみようかな」というふうに心が動くというところでは、非常に周囲から外堀を埋めていくというのはいい方法ではないかなと思っています。高齢者向けのスマホ教室もとても人気があるようなので、そういったところへ興味を持って参加して、その時だけで終わらせるのではなく、学んだら使う機会があるというのが理想的だと思います。
 今回ご紹介したプログラムは、LINEの仲間を作るきっかけであるものというふうに考えています。仲間とSNSを活用して交流することで学んだ技術を繰り返し使って、操作を覚えて、わからないことが出てきて、身近な仲間同士で教え合ったり、解決方法を相談したりできます。先ほど相談会のご紹介もございましたけれども、そういった相談会も1人で行くのはちょっと二の足を踏んでも、仲間と「一緒に行ってみようよ」ということになると足も向きやすいと思います。
 今回こういった連絡会で「LINEプログラム」や「ウォーキング+LINEプログラム」という私どものプログラムを知ってもらって、こういった考え方を役立てたいと考えています。
 このテキストは、私どものホームページから購入することもできますし、ホームページで各プログラム紹介動画を出しておりますので、是非ご覧いただければと思っています。
 最後に私どものホームページに「自主活動グループの広場」というページがあります。このページは全国各地のグループから活動の様子を投稿していただいているページです。長く続いたグループというのは、本当にメンバー同士が自然に助け合いをするというのを見ております。こういった活動が地域での共生につながると実感として持っておりますので、是非たくさんのグループが立ち上がって交流して、長く続いていくということを期待して、いろいろ活動をこれからも続けていきたいと思っています。ご清聴ありがとうございました。

〇事務局
 武石様ありがとうございました。
 これから意見交換及び質疑応答に移ります。まずはアドバイザーの岩崎尚子教授よりご意見ご講評をいただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

〇岩崎教授
 大変興味深いプログラムのご紹介いただきましてありがとうございました。認知症予防の維持向上は運動であるという社会参加というメッセージが非常にわかりやすいなと思いましたし、また最後のスライドにありましたように「このプログラムに参加すると楽しいよ」ですとか「何かできると便利になるよ」というようなところで周りの方から参加をされるというところが、取り組みが広がっていく1つのきっかけになると思います。是非継続して、続けていただきたいなと思います。
 ウォーキングも、例えば歩くだけではなくて、その街の店舗ですとか商店街等々と連携をして、地域ポイントを活用したりですとか、あるいは医療機関との連携で、認知症予防につながっているかどうか経年変化を見たりですとか、そういった予防医療にも寄与できるような活動にもつながってくるのではないかなと期待しています。
 あと個人的にも非常に関心を持ちましたのが、教材についてなんですけれども、これについては出版されてらっしゃるということなんでしょうか?大体おいくらぐらいで販売されているのかというところをお伺いできればと思います。

〇認知症予防サポートセンター
 「LINEプログラム」と「ウォーキング+LINEプログラム」のテキストはダウンロード販売になっておりますので使用料として1冊550円です。ご自分で印刷していただくとかiPadなどで見ていただくとか、そういう利用になると思います。

〇岩崎先生
 こういった教材開発はとても大事だと思っていまして、内容次第では、国内だけではなくて、今私がAPECという国際機関の、高齢社会とデジタル活用に関連したプロジェクトの委員長をしていますが、海外でも認知症予防が、関心の高いテーマにもなってきています。標準化もできるのかなと、期待をしながら拝見しておりました。
 最後に参加される方ですが、やはり毎回の活動に積極的に参加される方が結構限定的になってしまうケースがあると思います。同じ顔ぶれにならないように普段参加をされない方に、どういうふうにアピールをしていくのかということも今後のチャレンジになってくるかと思いますので、何かアイディア等ありましたら一緒に検討できればと思います。
 以上、コメントとさせていただきます。ありがとうございます。

〇事務局
 ありがとうございました。
 続きまして、会員様からご意見ご質問をいただきたく存じます。

--質問なし--

〇事務局
 本日予定しておりました次第につきましては以上となります。本日出席いただきました皆様におかれましてはお忙しい中、ご参加をいただきまして、改めてお礼を申し上げ、今回を終了させていただきます。ありがとうございました。適宜ご退室の方をお願いいたします。

 

記事ID:110-001-20240416-011441