第八回東京デジタルサービス会議 議事要旨

日時

令和5年12月26日(火)午前10時から正午まで

場所

第一本庁舎42階特別会議室C・D、オンライン併用

出席者

■委員

村井  純(座長) 慶應義塾大学 教授

小野 和俊 株式会社クレディセゾン取締役(兼)専務執行役員CDO(兼)CTO

越塚  登 東京大学大学院 教授

岩﨑 尚子 早稲田大学電子政府・自治体研究所 教授

水町 雅子 宮内・水町IT法律事務所 弁護士

■東京都

宮坂  学 東京都副知事(東京都CIO)

■オブザーバー

高野 克己 一般財団法人GovTech東京 副理事長(最高総務責任者)

各務 茂雄 一般財団法人GovTech東京 業務執行理事(最高技術責任者)

畑中 洋亮 一般財団法人GovTech東京 業務執行理事(最高戦略責任者)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事「次期東京デジタルファースト推進計画の方向性」
  3. 閉会

議事(敬称略)
次期東京デジタルファースト推進計画の方向性

事務局:

  • 議事(事務局説明資料)に沿って説明。

■論点1:都民の実感を伴うデジタル化を目指す上での次期推進計画の課題や基本的な方向性

宮坂:

  • 今回、行政手続に関するインターネットでの調査を実施し、興味深い結果が確認できた。例えば、約4割の人が手続を不便と回答いただいた。
  • 仮説として、申請主義や、情報の乱立により、自分が何を受けられるのか、よく分からないのではないかと考えた。2割ぐらいの方が、本来だったら受けるはずだった支援を受けられていない。取り残されたというよりか、知らなかった、知りそびれたっていう問題が結構多かったようだ。
  • 今までは量的な手続デジタル化の拡大を進め、100ある手続のうち70までやるというのが本年度の目標であった。量の方は70を100にする一方、質的なところで100やれば終わりではなく、さらにプッシュ型でやっていく等を検討。
  • 都のサービスか、区のサービスか、政策連携団体のサービスかは住民視点で見ると関係ないことが多い。垣根を越えるようなサービスを提供するということで、政策連携団体含めて範囲を広げていく。
  • 質の方ではプッシュ型や、組織を越えて1つの手続をできるようにするといった、今まであまりやっていなかった点に注目。
  • 今まではサービス出しっぱなしのケースが多かったが、今後は、全ての手続にユーザーからの問い合わせや、フィードバックをいただくメカニズムを組み込む予定。
  • ユーザーから改善してほしいという声をいただきながら、住民と対話しながら、まさに住民参加型で改善していくということをやっていきたい。
  • 第2期は「量から質」を1つの大きなテーマにしたいと考えている。

越塚:

  • この会議は当初デジタルファーストということから始まって、GovTech東京も設立。データの分野ではTDPFも始まった。成果も出てきた。アンケートの結果を見ていると、課題が高級になってきた。
  • この会議が始まった当初、そもそもデジタルサービスになっていないとか、ユーザー目線じゃないとか、基本的なところが多かった。まさに量から質へ、その質もかなり深掘りするところに来た。
  • やり方は変えていかないといけないところはある。例えば垣根を越える縦割・横割りで困ったとか、手続先の組織認識が曖昧というのは、おそらく行政がやっている手続の量が極めて多いということ、絶対量の問題と、行政に毎日行くような手続があまりない。人生の中で1回しかない手続とか、比較的そういうものが多い。
  • これが利便性を下げているとすれば、ある程度体系化や、サービスに番号を振るとか、標準化とか、次の段階の作り方を考えていく必要。
  • サービスから漏れてしまうこともあるのなら、プッシュだけでは対応できないような気がしており、教育とか、トレーニングがあってもいい。
  • 基本方針が6つ出ていて、綺麗に網羅されていているものの、もう1個あるとすると、ダイバーシティ。お年寄り、障害者という話もあるとともに、国際化もあるので、東京らしい。この基本方針レベルのところにあってもいい。

小野:

  • 会議設置の最初の頃は基本的なところで、もっとこうしたほうが良いというものがあった。今回は、非常に完成度高くできてきており、概ね違和感がない。
  • 今後の方向性も、3つの改革について、ビフォーとアフターのイメージが明記されていて、非常に方向性が明確。
  • その上で、1つ大事なのは、アンケート結果で、手続所管組織の認識のところにヒントがあると感じた。多くの人が、だいたい都だというように、都の役割を過剰認識していると読み取れる。
  • ウェブサービスでは、第一純粋想起という言葉がある。広告に誘導された想起ではなく、何かしたい時に、第1番目に来るもの。都民から見た時に行政サービスの第一純粋想起が、都ということであれば、区市町村や政策連携団体という実際の所管を変えるのは難しいと思うので、他の所管組織や区市町村に対して、手続のリンクを貼るだけならハードル高くなくできる。
  • URLが変わったとか変更管理があるかもしれないが、ちょっとしたUI/UXの改善が、都民のデジタルQOLの大きな改善に繋がる可能性がある。
  • 組織的なところでは、GovTech東京の組織図について、55名にしては組織が色々ある。いい悪いではなく、ここまで明確に機能特化組織が存在するのであれば、例えばデータや、セキュリティにフォーカスした形の役割を考えていってもいい。

宮坂:

  • GTTの畑中理事が制度のレジストリとして区市町村や国、都の制度の構造化をこども分野からやってみようとしている。

畑中(オブザーバー):

  • 子育て支援制度レジストリは、GovTech東京が中心となり、都と連携して区市町村に協力を仰いで、給付や訪問サービスなど250ぐらいの区市町村の子育て支援制度を構造化しようとしている。
  • この動きは国と連動しており、先日20日に発表されたデジタル行財政改革の中で、都のモデル的な動きに合わせて、総務省の行政評価局が1741自治体の子育て支援制度を同じ構造で書き起こしてオープンデータにしようとしている。
  • このオープンデータを、民間の様々な方々、検索エンジンや母子手帳アプリ、保育園アプリとか、子育ての当事者に1番近い媒体が活用いただけるよう目指していきたい。東京も年度内にモデル的に3自治体ほどで実証をしていきたい。

岩﨑:

  • デジタルサービス会議がスタートした背景には、コロナ対策のデジタル化があった。
  • それ以降、この3年間に非常にスピード感を持って様々な取組を進め、その第1期の成果を踏まえて、今回検討されたという次期推進計画の6つの基本的な方向性については異論ない。時機を得た課題に的確に対応した推進計画、基本方針である。
  • 利用者中心だとか高品質、情報システムの整備、デジタルデバイドの対応、区市町村との連携について全く同意。
  • 参考までに2点。1点目は11月に今年18年目となる早稲田大学の世界デジ政府世界ランキングを発表。世界のデジタル政府の課題が、これらの点に集約されている。
  • 2点目。先週デジタル政府関連の国際会議で、国連を始めとする国際機関と意見交換をしたが、今後効率性や、ガバナンスの強化、高齢化やダイバーシティに対応した行政のデジタルデバイドの対応などが、今後重要な局面を迎えるという話があった。
  • デジタルを持つものと持たざるものとの間の格差、自治体規模や予算、リソース不足による自治体間格差が生じないよう、今後どう東京都が対処すべきか、すでに宮坂副知事の下、62の区市町村とCIO連絡協議会などでネットワークを構築されていると思いが、引き続き尽力いただきたい。
  • 次に都民の意識調査について、不便を感じる理由というのは想定どおりで、例えば窓口対応の必要性、紙との併用、手続の複雑性、また手書きとデジタルの併用など。
  • 一方で、行政サービス手続で不便を感じたことがないという回答が過半数を超えている。また利用者で不便を感じていない回答者は約6割、そして利便性の実感理由が、コンビニ交付、マイナポータルでの電子手続、オンラインでの完結。こうした利便性を安全性とともにPRをしていくということも大事。
  • 今後の課題は、利便性の実感がないという回答の課題を1つずつ解決していくということと、調査対象者に必ずしもデジタル弱者が含まれていない、オンライン調査であること。最終的に情報弱者にどういう環境を整えれば、さらにはプッシュ型で情報提供をしていくことができるかということが課題。これら、子育てDXの推進にも寄与していくのではないか。
  • デジタル化によって便利になると期待することとして、スマホ対応やサービス時間の短縮、添付書類の省略がトップ3。高齢者のデジタル化の活動をこれまで続けてきた経験から申し上げると、全く同意。とりわけスマホからの申請の場合、添付など限られた画面の中で複数の対応しなければならないことなどの複雑性がいわゆるデジタル化の障壁となっている。

水町:

  • 方向性については、すごく綺麗にまとめていただいている。
  • 検討がかなり進んでいるので、今ある課題は、解決が難しいものが残ってしまっている。例えばプッシュ型の推進は、非常に重要であって、行政DXの利便性を感じていただける機会になると思う。ただ、プッシュの場合に何をプッシュしていくか、サービスの選定がかなり難しい。
  • 都だけに限らず広く区市町村を含めれば、所得情報と世帯情報、様々な情報を持っており、かなりのプッシュ型はできるはず。ただ、やはり都民の要請も考えなければならず、所得情報を持っているからといって、この給付受けられますよとあまり強くプッシュしてしまうと、不快な気分になる可能性は考えられる。
  • 非課税世帯の場合は、例えば生活保護受けられることをプッシュでお知らせされてしまうと、もちろんそれが助けになる方もいらっしゃるが、なんでそんなメッセージをもらわなきゃいけないのだとか、どうして私が非課税世帯って知っているのだとか、色々な問題が提起されかねない。何をプッシュしていくかが難しい。
  • この点、子どもDXは適合的。お子さんの年齢に基づくプッシュは許容度が高い。予防接種、学校のお知らせ、健康診断のお知らせはプッシュに向いている。
  • あとは区市町村との連携も重要。過去にもオンライン申請の共通システムなどもあったが、区市町村側に都と連携することで具体的なメリットがあることが必要。例えば、連携による予算の低減や業務効率化、あとは住民メリットが高いことなど。連携するとどうしても、自分独自でできないので不便になるとか、カスタマイズができないなど懸念を持つが、それを超えるようなメリットの提示、それができる分野がどこか、この選定が非常に重要。

村井:

  • このアンケートは初めて。ワクチンの摂取や保健所の手続は、東京で言えば、区役所の実施だろうと思っているものが、意外と都がやっていることもある。調査では、基礎自治体が実施していると思ったが、実は都だったものなど両面を調べることが必要。また定点観測でやっていくと、推移が分かってよい。

畑中(オブザーバー):

  • 今回のアンケートは、全体に聞いているが、一生に1回しかやらない手続も当然あるため、それぞれの手続はいつ頃それぞれなされているのかを聞くのも重要。
  • 例えば、子育て時は、出生届を出すと6個か7個連続してやらなければならないなど一気に集中。一生のうちにどの手続をいつ頃やっていて、そこがどうなのかを聞かなければならない。世代的に違う方々に子育てを改善すべきですかって聞いても仕方ない。時間軸で区切って数字を見た方がいい。
  • どこを集中的にデジタル化なりBPRすべきなのかっていうのが、見えてくる。

小野:

  • 民間企業だとNPSを取る時に、トランザクショナルNPS、つまり例えば飛行機乗る時、降りた直後が一番機内サービスについてのビビッドな体験情報を持っている。降りた瞬間に、この度のフライトはいかがでしたかと聞くと、ものすごく正確なデータが取れる。
  • 2年後に言われても、解像度が低い回答しか得られない。何かの行政サービスで、特に結構手間がかかりそうなもので、その手続のトランザクションが終わるタイミングでいかがでしたでしょうかって聞くみたいなことをやる。
  • しかも一生に1回か2回しかないと、そのトランザクショナルな満足度の取り方、感想の取り方みたいなのを導入していくことが必要。それと全体とを併用していくのはあるかもしれない。

村井:

  • もう1点、死んだ時の手続が大変。聞きにくいのかもしれないし、プッシュで聞いたら怒られそうだが、手続としてどこで何をするかというのがわかりにくい。
  • 法律的に死者に対する家族の手続が複雑なので、ライフイベントに対してターゲットを絞る。それからサービスが全体的にどうなっているかを見ていくことが必要。
  • 一方ではとりあえず、まとめて定点観測ができるような形で今後も同様のアンケートはやっていただいて、少し精度を上げていくことが重要。

越塚:

  • デジタルを進めていく上で、課題になってきたことに、プライバシー意識の問題と、あと特に高齢者のリテラシーの問題がある。ただプライバシーの問題に関しては、若者を見ているとこれから急激に変わっていくのではないか。また高齢者のリテラシーも世代が替わってくると、劇的に変わってくる。それによりやり方も変わってくる。
  • 変わることが想定されていることもあり、定点観測はしておいた方がいい。
  • 課題が高度化してきていると思うので、数値のことだけじゃなくて、個々の具体的な事例も拾い続けた方がいい。

村井:

  • やはりコロナの間に、DXリテラシーが急激に良くなったため、あるところで、ここはもう聞かなくていいということも出てくる。それを考慮してアンケートを作っていただくのがよい。
  • スマホでやる際、サービスのポータルで困るのは説明が長いこと。できるだけルールに従って、あるいは法律があるから、それを分かってもらいたいという思いがあるのはわかるが、サービスに到達するのが難しい。

岩﨑:

  • 調査の手法。私どもも電子政府世界ランキングを18年間調査してきた。その間、当然デジタル、あるいは技術やサービスとか、様々な観点で状況も変わってきた。とりわけデジタル分野に関しては、最近は生成AIが電子政府でもかなり導入されるなど新しい視点を常にベンチマークに組み込んで、且つそれを経年変化できるように調整していくかを考えながら評価項目などを見直している。
  • 経年変化を見ながら、どのように利便性が向上していったかというところを考えていくための調査というのは、大事。一方で、デジタル技術の進歩が非常に早いので、その点に関しては柔軟に導入しながら、評価していくということも大事。
  • 長期的な視点でどのように東京都のサービスがよりよく改善されていくのかというところを見る上でも重要な観点になってくる。
  • 調査のタイミングについて、やはり即時性が大事。サービスを受けた人がそのサービスを受けたその時点で調査を受けられるような環境というのを作っていくのも大事。

水町:

  • アンケートに追加した方がいいと思った項目について、アナログ手続で不便だったこと、困ったことを聞いてみてもいい。例えば待ち時間が長かったとか、書くのが面倒くさかったとか、そういうことが出てくるのではないか。
  • デジタル化して欲しい、デジタル化をもっと進めて欲しい手続、もっと使い勝手を良くしてほしい手続、そういうユーザーの希望を聞いてみてもいい。

■論点2:行政手続デジタル化及びQOS向上に当たり、特に取り組む必要があることなど

宮坂:

  • 住民参加型でいいサービスを作っていくのがデジタルの有利なところ。ただ、これまでの行政のデジタル化は、サービスを出したら、そこでおしまい。ある種、物を買うかのような、サービスの調達をやっていた。デジタルはやはりサービス。出した後にどんどん良くしていくことができる。使っている人の声をもらうことが大事。
  • 利用者の方に使ってもらった後に何点だった、ここが良かった悪かったと聞くのは今までほとんどやれていない。一部水道のアプリや、最近だと018サポートでできるようになり、概ねいい結果が出ていると思う。これを思い切って広げていきたい。
  • 究極は、一部のサービスを内製化すること。内製化した方がどんどん直せる。最近では、一部のサービスをGovTech東京の中だけで改善できた。
  • ローコードを使った業務アプリケーションを作り、市民向け、職員向けに職員が改善するケースもどんどん出ている。全てのサービスを内製化し、都民の声を聞きながら直すところまでは、相当時間がかかると思うが、少しずつでもできることを増やしていきたい。体制についても、GovTech東京の体制を強化し、やっていきたい。

越塚:

  • デジタルファーストを考えると、行政手続以外もあると思う。例えば運動施設やホールを借りる時の手続とか、あと博物館、美術館、図書館もあり、高校、美術館もある。
    多分都民としては、そちらの方がむしろ日常的。行政手続でやったことの成果をそういうところにも反映していくことが必要。それをやっていく時に、全部都でやっていくわけにはいかないことになる。
  • 官民連携で、民間と協業してやっていけるところだと思う。そうすると体系、ID、APIというような作り方が重要になってくる。

宮坂:

  • サービスの範囲を広げる意味では、都庁だけではなく、政策連携団体や区市町村も重要。区市町村の方との議論の中で、共同化、共通化したいものトップにあるのは、施設予約。
  • 都と区市町村の施設でまとめて予約できた方がいいよね、という思いはあるので、少し時間がかかるが、解きほぐしながら、やっていきたい。

小野:

  • 垣根を越える理想系としては、このスポーツ施設はいっぱいだが隣町のスポーツ施設なら空いているというレコメンドが来るといい。

畑中(オブザーバー):

  • 今回挙げていない領域として、認知症の高齢者。そもそも手続できないとか、情報管理がだんだん難しくなってくる。あるいは独居や高齢者夫婦でいるという状況で、スマホを使えるようにとか、アクセシビリティを高めていく。一方で、そもそも手続をしなくてよくするとか、手続そのものをデジタル化することと同じぐらいユーザー側の、特に手続さえ難しい方々にどういう情報を繋いでいくのか。本人同意したことを例えば銀行とか保険会社とか、いろんな契約手続に関係してくるそういった情報をどうやって繋いでいくのか。超高齢化社会が目の前にあり、東京都は人口が多いので本格的に検討、実装始めなければいけないフェーズに来ている。

村井:

  • 1人も取り残されないという基本法を作った。できるわけがない、と当初は言われていたができた。本当に困っている人のところに近くの人が走っていって助け合うというモデル。
  • スマホは使えない、手続はできないという人を置いてきぼりにしないためには、誰かが最後はアシストしてあげることが大変重要。

小野:

  • 出してから良くしてくみたいな話は民間企業でも考え方の転換ができなくて苦しんでいる会社はある。我々の時にすごく効果があったのが、カスタマーサクセスという言葉を掲げてフレームワークを学んで入れていく。出したら終わりではなくて、出してからが改善の始まりをキーワードとしていくのがよい。
  • 電子政府でも生成AIの取組みたいな話というのがあるから調査項目を変えるという話があったが、今の時代、生成AIを無視はできない。とはいえ行政機関なので、当然オプトアウトのところなど、いろんなハードルはあると思う。改善に対するアクセルとして、検討はした方がいいと思う。
  • ノーコード、ローコードで内製化みたいなところも、我々もプロフェッショナルな開発者の内製チームを作っているが、それをさらにスケールさせるためにノーコード、ローコードで、一人一人の総合職の社員も取り組むということをやっている。生成AI全職員によるDXみたいなところは、都としても踏み込んでもいい。
  • 資料に、不備の発生を抑制とか処理迅速化で、AI-OCRとかRPAと書いている。確かにAI-OCR、RPAを使えば、今手作業でやっていた業務が自動化できて良かったねとなる一方で、例えばRPAは基本的にキーボードとマウスを奪って操作を自動化する仕組みなので、画面の変更に弱い。後にRPAで自動化した仕組みそのものが技術的負債になるということがよく問題になる。短期的に見たらよかったが、中長期的に見るとむしろより大きな改善の足かせになってしまうみたいなこともあり得る。
    社内ではRPAファーストじゃなくてRPAラスト。最終的にどうにもならない時にはRPAで解決する。その前に王道であるAPI連結。最初からRPAを検討してしまうと、動きが取りづらいシステムになる。AI-OCRも同様。

各務(オブザーバー):

  • カスタマーサクセスは重要。
  • また生成AIは、アプリケーションに近いシンプルで簡単なやつと、あと深く細かいやつを両方見ながらやっている。
  • RPAラストも同意。APIツールを使ったデータ連携が中心点だと思う。

岩﨑:

  • 誰も取り残されない社会について、先週国際会議でシンガポール政府の人と話した際、シンガポールではデジタルアンバサダー制度を導入していると聞いた。中堅から高齢者世代の方を対象に、取組を推進している。
  • 現在、東京都の方でもデジタル推進を進める人材の育成を進めているが、今後スマホのみならず、支援対象を少し増やしていってもいい。
  • デジタルリテラシーの高い層が今後増えていく一方で、DXはより先進性を持っていく。デジタルに対する意識格差そのものは縮小していくものの、やはり技術格差というのは恒常的な課題。生成AIの議論など、今後どう生かしていくのかが重要。
  • QOSに関する取組に関して、やはり処理時間の短縮、添付書類の削減、スマホ対応のツールの分かりやすさ、使いやすさ。さらに付け加えられるとすれば正確性や安全性、そして信頼度の高さといった点も重要。
  • 事例として、子育てDXを伺ったが、もう1点既に東京都では防災対策が進められている。
  • 世界で発生している自然災害の経済被害の約1/3が日本で発生しているという衝撃的なデータもあり、この点に関しては、国際会議でも防災関係のDXやAIの活用がテーマとして大きな話題となっている。
  • 東京モデルが国際的にもかなり関心が高い中で、世界の都市をけん引していくために安全で安心なスマート東京に不可欠な行政サービスの質の向上にも繋がってくる。
  • 災害時と言われるいわゆる非常時と平時のデジタル化を区別することなく、同一化できるか。仮にできるとすれば、コロナのような感染症対策や、あるいは懸念される首都直下型地震でも行政サービスとして非常に重要な役割を果たす。

水町:

  • 既にデジタル化が進んでいる状況で、残された課題は、調整が重いものが多い。
  • 018サポートで、カスタマージャーニーを意識されて、広報をすごくやっていらっしゃる。ただ、そこで親子関係の証明がデジタルで解決できない。マイナンバーカードだけでは親子関係の証明が難しい。健康保険証や戸籍とかになってしまうので、制度上証明を簡単にできるようになると手続のシンプルさも増してくる。ただここは都だけでできるものではない。
  • 行政手続以外の行政サービス部分が、都民にとってはすごく親近感があるところなので、QOSを実感してもらいやすい。都営交通、博物館、美術館、動物園、水族館、あと学校と都立病院もある。ただ、調整が難しい事案かとも思う。都民目線で考えると、改善が図られるといい。調整困難な場合、調整相手にとってのメリットを出していく必要。
  • 例えば、学校もプリントをpdfで見られるようにするなどはやっているが、現金の取り扱いは学校側も大変。これをキャッシュレス、デジタル化できるとなったら、学校事務の効率化にも繋がって、教育に時間を集中できる。
  • 病院も繁雑な事務が効率化できれば良いというところはあると思う。都民のQOS向上と行政効率化を含めて、デジタル化されるといい。
  • 動物園とか水族館についても、繁忙期は入園に並んで入園券買うのに時間かかるとか、そういうものをデジタル化すると良いと思う。
  • デジタルデバイド対策について。私が区市町村会議に行こうと思って区市町村役場に伺うと1階の広場のところで区役所の職員がコロナの予防接種について住民の方から何日がいいですかと聞き取って、予約を取ったりされている。こういった基礎自治体の職員が色々対応されているのは、日本の強み。
  • マイナンバーカードの普及率が低い頃、区市町村の職員さんが一生懸命カード取りませんかと来庁した方に言うので、高齢者に結構持っていただいたということもあった。そういうデジタルデバイド対策の側面もあるかと思う。

村井:

  • オーストラリアのDXについて、ICT大臣の話を伺ったことがある。大分前だが、役所の電話の時間を全て測定したそう。電話の時間が全てなくなったとすると、どのくらいのコスト削減になるかを評価しておいて、それでデジタル化を進めた。デジタル化が進むと、これだけうまくいったと、これだけ時間を節約できた、コスト面でも節約できたということだった。

宮坂:

  • 都庁単体ではやりきれていないが、新経済連盟などのデータでは、数兆円ぐらいが行政手続コストとも聞く。都庁視点だと、過去20年間で3割ぐらい公務員が減っており、重要な視点ではあるが、正確に測定はできていないかもしれない。
  • 確かに経済効果や、時間コストが分かれば説明がしやすい。

小野:

  • 分かりやすい例では、当社では2019年からデジタル化を始めて、業務自動化したのが何時間なのか計算したら年間79万時間。一人の社員の残業を含めた労働時間が2000時間ぐらいなので、400人分の社員の仕事が自動された。
  • あともう一つがペーパーレス。計測したら76t年間減らした。76tを積み上げていったら、東京スカイツリー2.3個分。そういう誰でもわかりやすい例えとかで伝えていくことで、本当にどれぐらい進んでいるのかの実感が得られる。

越塚:

  • 今の時代だと減らしたほうがいいのは電話じゃなくて、むしろメールかもしれない。

宮坂:

  • 都庁は内線が多い。あとは都民の声を聞くと、やはり電話も多い。
  • 今まで我々の営業時間しか電話できなかったので、都民視点で言うと、電話がネットになるのはとても大きな変化になる。

村井:

  • ビザを取るためのポータル処理。複雑な説明がすごく改善されていると思った。カナダでは、全てのページに不満があるかというボタンがある。だからどこをやっていても気がついたことがあったらすぐに言える。サービスを受けた瞬間こそが1番重要な改善に参加するタイミング。

宮坂:

  • 手続の最後に都民の声を聞く点だと、018サポートができて多くの声をいただいた。
  • 都税事務所では、職場の改善をしたいということでQRコードを貼って窓口に対して何かありますかなど聞いている。利用者の声を聞くことによって、職員が自分で気づいて自分の力で改善していくっていう力が生まれる。そういったことはオフラインでもオンラインの窓口でも両方から住民参加型で声を聞いて直すのをやりたい。

小野:

  • 即時性があるとフィッシングだと思われにくい。

宮坂:

  • プッシュをやる時の1つの課題がフィッシング。
  • いろいろなところから通知が来るようになるわけなので、フィッシングされやすい。

小野:

  • フィッシングじゃなくても、都民体験で考えた時に多すぎるプッシュ通知はうるさいからアプリそのものがブロックされる。

岩﨑:

  • どう定量評価していくか。自治体DXの推進具合を調査するために、例えば評価項目としてペーパーレスや、勤務時間の短縮が使用されている。目に見えて分かりやすい方法でDXの実現をアピールしていくのは大事。実感できるような広報が大事。

村井:

  • 防災に関しては、東京都のインフラの会議でもすごく話題。日常の時と何かが起った時に避難所に行く時には、人の集まり方も違う。インフラ面からどのように対応するべきかという議論はあった。
  • 今回のコンテキストで、防災に関して都がすべきことというような観点はあるか。

岩﨑:

  • 他の道府県と比べ、東京都ではかなり防災対策を進められている。いつ自然災害が発生するか分からないという段階で、予防・防災対策を講じるか、どの程度の予算を確保するかという点も課題。事後対策より負担を縮小できる意味で事前対策が大事。
  • 避難訓練等もよくされているかと思うが、そういったところにデジタルを活用した訓練やサービスがきちんとできるか、実装できているかどうかを見ていくというのも一考。
  • 避難場所に行くだけではなく、デジタルサービスが機能するかを確認するのも大事な訓練。そして非常時でも平時でも全く区別なくサービスを受けられる環境・体制を作っていくことが、重要。
  • 有事だからとか、非平時だから余計そのコストをかけなければならないとか、人を割かなければならないというのではなくて、今災害が起きても対応できるような仕組みという観点から構築していくのが大事。

村井:

  • 2011年の震災時も、実は完全に停電しているが、スマホだけは繋がっていた。こういう状態が少なくとも3時間は続いていたというのが、分析で分かっている。従って、それがライフラインになる。このライフラインで何を得られるか、どういう情報にアクセスできるか。ここが重要。
  • 電源がやられたとしても充電されているものは繋がる。基地局はかなりバックアップがある。繋がる可能性が高くなっているので、それを前提にした訓練の仕方とか、対応もしなければいけないかもしれない。

越塚:

  • 防災を若干やっていて、やはりデジタル時代のあらゆる手続がこうやって100%デジタル化すると、災害があった時に手続が何もできなくなるということの可能性が、最近大分出てくる。災害の時にデジタル手続がどうなるかの検討が必要。
  • 例えば、クラウドなんかも結局契約なんかを見ると、災害時は動作保証しない。
  • 保証されないのだけれども、ベストエフォートで何らか動くよう、災害時のことも考えたようにすることは大事。
  • 避難訓練の時に、避難所に行ってなんかヒアリングする時に、前は紙だったのが、最近はクラウドになっている。災害があったらヒアリングできないかもしれない。

水町:

  • 防災についてはそのとおり。デジタル化が進めば進むほど、考えていかないといけない。震災復興会議では、デジタル化も重要だという議論は出ているが、デジタル防災をどうするかという論点は、そこまで出ていない。
  • 観点変わるがQOSで言うと、ガバメント側の言い訳が最初に並ぶ話があったが、法律家からすると、利用規約とプライバシーポリシーの必ず同意取った方が、取らないよりはいい。取りましょうと法律実務家としては言いがち。
  • カスタマー目線で見ると、今の作りというのはあまり良くなくて、スマホの画面で長い利用規約、プライバシーポリシーを読んで同意ボタンを本当に押しているのか、嫌だったら同意しないということでサービスを選んでいるかは懐疑的。本来は規約、プライバシーポリシーのあり方というのも考えていくべきとは思うが、都だけの話ではない。

畑中(オブザーバー):

  • 3.11の災害の直後に、被災地で医療者を送り込むということもあったが、金融行政側でやったことがATMを止めないということ。現金を被災地に流通させなければ、人々が物を買うとか、エコノミーが成立しなくなってしまう。
  • 停電もあるので電子決済もできない。通信が止まればSuicaも使えない。何も使えない、チャージもできない。
  • デジタルで利便性を高めつつ、最悪の時はバックアッププランを被災地に送ることが重要。多分デジタル化を進める主体が、そのプランをセットで考えること、具体的に実効性のあるロジスティックスまで考えておくとことは必要。

宮坂:

  • 職員のアナログ化が僭越ながら都庁は強いので、何があっても臨機応変にアナログで対応できてしまう。完璧にデジタルが多重化してもデジタルが駄目になった時に現金はどうやって使うかとか、被災証明って紙でどうやってやるのか等、できなくなってしまうと困るので、デジタルとアナログの両面が必要。

村井:

  • GovTechができて、区市町村、それから官民の連結が期待される。本質的に行政構造では連結ができない、デジタルはそれが連結できるのだという理論はずっとあった。実践としてこれが機能し始めているという印象を持っているので、大変重要。東京都が良い見本、実績を作って、他の地域へうまく展開をしていくということは、日本国全体にとっても重要。
  • 大都市のメトロポリタン東京がどのように取り組んでいるかということ自体が、世界のいろんな都市に対して、ある意味先導者となって貢献できることが伝わってくるような議論が、今日は説明も含めて伺うことできたかと思う。

今後の予定について

事務局:

  • 今後の活動予定について説明

閉会

 

記事ID:110-001-20240214-011419