東京データプラットフォーム協議会 第1回エリア連携WG 議事概要

時間:2022/9/16(金曜日) 15:00~15:55
場所:Zoom(オンライン会議)

アジェンダ

  1. エリア連携の構想と本WGでの討議内容
  2. ユースケースイメージ検討
  3. データ連携実現に向けた課題整理
  4. 事例紹介
  5. 意見交換
  6. 今後の進め方

議事概要

1.エリア連携の構想と本WGでの討議内容

⑴TDPFが目指すエリア連携

東京都を中心として各エリア間、その他接続するプラットフォームのハブとなり、データ相互利活用を実現し、新たな価値の創出を促す。具体的には、エリア同士の施策連携・高度化や、各エリア及びその他分野別基盤のデータを融合した広域施策の実現を、エリア連携によって図っていく予定

⑵エリア連携 構想のステップ

来年度以降、基盤構築、データ整備事業など、本格的に事業を開始する計画。
連携施策、接続、ポリシーの3つの軸で検討中

  • 連携施策はユースケースのイメージと取組の行動計画策定から開始し、具体的なユースケースの考案と試験的接続を用いた実証、実際の連携基盤上における実現のステップを想定
  • TDPFを介したエリア間の接続は、接続に向けた課題の明確化とロードマップの策定から開始し、具体的な接続仕様の決定と技術実証、一部都市OS等との連携運用の開始のステップを想定
  • ポリシーは、連携においては運用上どのような課題が存在するのかを明確化することから開始し、課題に対するポリシーの仮策定とユースケースを題材にした検証、ポリシーの本策定と運用の開始のステップを想定

⑶エリア連携WG目的と検討事項

  • ア.本WGの目的と検討事項は以下の2つ
    • 連携施策の検討。エリア間のデータ連携によって実現する施策について、具体的なユースケースを考案し、実証を実施
    • 接続の具体的なあり方の検討。連携に係わる課題を踏まえ、連携を実現するにあたってTDPFがどのような機能や役割を有するべきかを検討。また、基盤整備事業等の他事業と連携し、連携実現に向けた取組を進める他、接続・連携の実証を実施
  • イ.WGの参加者は、スマートシティ推進エリアを中心に想定。具体的には、スマート東京先行実施エリアである大丸有、竹芝、豊洲、西新宿、南大沢、ベイエリアの6つのエリア。また、東京都・首都圏等のその他のエリア、スマートシティ参画事業者、課題解決に関わる有識者、都庁関連部局などの参加者を想定
  • ウ.連携対象となるTDPF事業は、主に基盤整備、データ整備、ポリシー案策定を想定

⑷今年度のWG活動

  • WG1回目は、TDPFが考えるエリア連携の構想や、WGにおいてどのような議論を今後行っていくかを説明。この説明に対して、実際にスマートシティ事業に取り組んでいるエリアの方から、現在の取組状況を踏まえたエリア連携の将来イメージと期待感を共有及び、意見交換を実施
  • WG2回目以降は、エリアの施策立案に係わる担当者等を中心に、具体的なユースケースの検討、エリア連携で可能となる施策等のアイディア創出、及び連携にあたって想定される課題を考察・整理するための取組を実施予定

2.ユースケースイメージ検討

⑴エリア連携 ユースケースの観点

施策のパターンは以下2つを想定

  • 各エリアで行っている施策を相互に連携するパターン。各エリア内で完結しているサービスを連携させることにより、複数エリアにまたがったサービスへと発展
  • 都全体や、首都圏全域のような広域の施策を実現するパターン。各エリアからデータを集め、分野別のプラットフォームのデータも必要に応じて加えることにより実現

⑵ユースケース 検討分野

  • ア.各エリアにおいて比較的多く取り組み(予定)の施策や、その施策を支えるデータに関連した分野が、ユースケース検討テーマに適していると想定
  • イ.施策は、人流・交通流のデータ分析、エリア回避支援、混雑緩和、スマートモビリティ、MaaS、VR観光・イベントといった、比較的実施しているエリアが多い施策を想定
  • ウ.施策を支えるデータは、BIM(Building Information Management System)や、CIM(Construction Information Management System)、二次元・三次元の地図情報といった基盤に、カメラ映像や人流・交通流などの各種データを加え、組み合わされたものを使用する想定

⑶ユースケース 検討分野案

  • ア.広域の防災等、各エリアで比較的取得されているデータ活用が見込める分野を検討
    • 防災施策相互連携の観点で、個別の防災施策が対象のスマートシティエリアのみに閉じることなく、近隣エリアにて相互連携することで、モビリティによる帰宅支援の連携や、支援物資の相互融通、避難所満空情報の共有による避難者の分散誘導など、お互いに施策の効果を高め合うことを想定
    • 自治体が実施する広域防災施策との連携の観点で、各スマートシティで収集する被災・発災状況を集約し、自治体としての対策指示に利用、自治体からの情報を各エリアのサイネージ・地図情報アプリ等の仕組みを利用して被災者に届ける等の連携を想定
  • イ.エリア連携WGにおけるユースケース検討のインプットとして、防災WGのユースケースとの連携を想定
  • ウ.その他検討の対象として考えうる分野は、広域見守り・防犯、スマートモビリティ・MaaSの広域化、エリアをまたいだ回遊施策・混雑回避策等を想定

⑷ユースケースイメージ創出のアプローチ

ユースケースイメージの創出は、データドリブンによる以下のアプローチを想定

  • 例えば、エリアが連携することによって強固な防災策を実現するためには、どのような施策が考えられるか、といった具体性を持ったテーマを設定
  • 具体的な数値などの情報ではなくメタデータ、即ち、「どのようなデータを保有しているか」という情報を準備
  • 保有しているメタデータだけではなく、外部から入手可能であると想定されるメタデータや、「このようなデータがあったら嬉しい」といったニーズについてもインプットとして準備
  • 集約したデータをもとにツールを用いて分析
  • お互いが持っているデータや、外部から入手可能なデータを組み合わせると、どのようなことができそうかをインプットとし、ユースケースのイメージを討議

3.データ連携実現に向けた課題整理

⑴連携にあたって考えうる課題

  • ア.エリア間連携の具体的な姿である都市OSの接続とデータの相互利用を考えると、相互接続、データ流通、拡張/変更への対応といった課題を想定
    • 課題の1つ目として、相互実現と接続の維持・継続を想定。接続仕様が複数ある中で、スムースな相互接続の確保等について検討
    • 課題の2つ目として、円滑なデータ流通に必要な取組を想定。エリアをまたいだ状態で、提供者-利用者の信頼性やルールに沿ったデータ活用等について検討
    • 課題の3つ目として、接続エリアの拡大に応じたシステム拡張のあり方を想定。すでに接続しているエリアのアーキテクチャ変更に対しての柔軟な対応等についても検討

⑵連携基盤によるアプローチ

TDPFのような連携基盤を仲介しエリア間を結ぶことで、エリアの枠を超えて、下記に挙げるように、相互運用性、データ流通性、拡張容易性を担保しながらのデータ提供が可能であると想定

  • 相互運用性の提供に関して、連携基盤が多様なインタフェースに対応することにより、接続仕様が異なる都市OSであっても、各エリアはその違いを気にすることなくお互いに接続することが可能。また、連携基盤によるAPIの仕様の公開により、各エリアにとって連携が図りやすい状況を作り出すことも可能
  • データ流通の促進に関して、連携基盤が多様なデータ提供手段、データ取得手段を用意することにより、データの利用者側は提供者側のデータ提供形態の多様性を意識することなくデータ連携が実現可能。また、利用や機密性の保持について連携基盤による統一的なポリシーを設けたり、あるいは連携基盤によってユースケース創出の取組支援を行ったりといったメリットも提供することが可能
  • 拡張性容易性の担保に関して、接続するエリアの拡大や、すでに接続しているエリアのアーキテクチャ変更などの変化に対しても、適宜機能を追加・拡張することにより、エリア側での拡張に伴うアクションを最小限に抑えることが可能

⑶課題明確化の進め方

WG参加エリアの事業取組状況と連携に向けた意見・要望を共有し、連携実現に向けた課題を整理

4.事例紹介

⑴導入事例(不動産業界A社の取組事例の紹介)

  • ア.特定のエリアでオフィスや住宅、文化施設などを集約したコンパクトシティの開発を進めている不動産業界A社は、DXを通じた豊かな都市生活・顧客体験の提供を目指しており、街の利用に係わるデータや、街の中のさまざまな施設で得られるデータを統合・分析し、顧客の属性に合わせたサービスの最適化・価値提供の実施に対して課題に直面
  • イ.参加企業A社は以下2点の取組を実施
    • サービス利用者のデータと施設ごとに管理されているデータを利用者が持つIDと紐づけて1本化
    • 取得したデータを繋げて活用するための統合プラットフォームの構築とデータの蓄積、収集、集計、分析を通じたサービス利用状況など顧客のデータの可視化
  • ウ.この取組を通じて、ユーザーにとってはIDを軸として不動産業界A社が提供する各サービスをシームレスに認識することができ、かつアプリを通じて、自らの嗜好に合ったコンテンツやサービスを受けることが可能
  • エ.IDにひもづいたデータが蓄積され、かつID数が増加していくことで、統計的な属性情報として成長することを想定。その属性に応じた新たな体験や気づきを提供することにも繋がり、ユーザーに寄り添った街への発展という効果をもたらすことを想定
  • オ.個人を特定したサービスの提供から街の情報の活用によるサービスのさらなる拡充。そして、集まったデータから新たな価値創出をしていくというステップを通じて、エリア間の連携によるデータ利活用ということの期待に繋がってくると想定

⑵今後のデータ利活用の可能性

  • ア.データの収集、蓄積量の増加によって、街の属性の統計化されたデータ、繋がりのあるデータというものが生まれてくると想定。以下のような街の空き情報の見える化と活用例を想定
    • 時間帯・天候・平日祝日などのカレンダー情報の状況に応じたエリアごとの施設、サービスの空き情報や混雑状況というものに応じて、最適な交通手段を選択、待ち時間を生むことなく駐車が可能
    • ユーザー属性に合わせたイベントを誘致することで、場としての利用、活用機会というものを提供しつつ、エリア間が連携をすることで密回避という形を生んでいくことも可能
  • イ.隣接する3つの市をまたがって流れる河川において、IoT共通プラットフォームを共同利用することで、水位データをセンサにより収集、見える化、共有することで、防災力を高める取組を実施。これまでは増水時に職員の方々の人手を介して目視で状況確認をローラーでかけていくという確認をしていたが、より危険性が高いと思われるエリアにはIoTのセンサを設置して、リアルタイムで確認を可能とするとともに、3自治体で共有することでより効率的かつ広範に、危険に対する対応を実現可能
  • ウ.河川のようにエリアをまたいだ連続性のあるデータに関しては、まさにエリア連携のテーマとして価値、および可能性の高いものと想定

5.意見交換

⑴参加企業B

  • ア.スマートシティの取組として、都市OSの整備から開始している状況。現状はリッチな機能を持った都市OSを作るのではなく、必要最小限の機能を持った都市OSを構築している段階
  • イ.エリアにおける飲食店等の満空情報、天候のデータなど、さまざまな情報を取得。また、それらの都市OSで集積したデータの利活用の取組として、スマートグラスへの店舗情報表示、人流情報と重ね合わせることによる分析を実施。分析を進めていくとともに他に必要なデータの整理、また施工方法等を検討。
  • ウ.エリア連携に対する目標・課題として、連携の方向性を模索している段階。ユースケースを描き、何が課題なのか、何をしていくのかを考えることが、データ利活用の1歩目と思料
  • エ.これまで各エリアでそれぞれスマートシティの取組を進めてきたが、それぞれの取組だけではなかなか一般の方に活用してもらえる機会を作ることが困難な状況。エリア連携WGには、共創領域を作っていくところを期待

⑵参加企業C

  • ア.ICT活用による実証実験を実施しているが、全体を統一してデータ連携を図るような都市OS的なものは、まだ現在整備がされていない状況。目指す姿を検討中
  • イ.データを活用してステークホルダーに提供する価値、都市サービスについて検討しているが、提供するサービスのテーマ設定、展開する対象範囲の考え方が課題
  • ウ.エリアにおける特有なテーマに沿えば沿うほど横展開しにくく、横展開しやすいテーマになると、エリアの独自色を失う。また、横展開しやすいものはすでに大手プラットフォーマーが同様のサービスを展開していることが多い。いい塩梅の都市サービスの設計をすることが課題
  • エ.エリアの対象範囲の考え方に課題がある中、エリア連携WGには、エリアを超えたデータ連携を、スマートシティとして差別化できるサービス提供を設計・実践していくことを期待

⑶参加企業D

  • ア.さまざまなデバイスから個人情報ではない属性データを取得し、アプリと連携。都市OSを活用したユースケースとして主に防災・交通領域を、いろいろな補助事業を活用しながら推進している状況
  • イ.データ利活用のポリシーについては、基本的にはガイドラインに倣って整備。昨年度の取組として、基礎自治体と連携をしながら、公道にカメラを設置し、防犯カメラの役割を担いながら、全面通行量の人流計測、属性を取得し、街に何か価値提供できないか、検証を開始している状況
  • ウ.エリア連携で都市OS、データ基盤等、いろいろ横に繋がっていく姿はとてもきれいな理想である一方で、課題感として、データを繋ぐ、連携することがゴール、目的になりがちであるところ。それぞれの地区でどういった価値を提供していくのか、ユースケースをしっかりと見せていくというところが目的であり、あくまでデータ連携は手段だと捉え、データ連携するありきの議論にならないようにする必要性があると思料
  • エ.エリア連携WGには、データ連携が目的とならず、例えば基礎自治体・行政の課題を解決する姿を意識して議論していくことを期待

⑷参加企業E

  • ア.都市OSは、内閣府が設定したリファレンスアーキテクチャに沿った形で、ユースケースを設定し、それに必要なデータを乗せていくという形のスモールスタートで育てていく考え方で推進
  • イ.人流データ等、スマートシティの取組で取得したデータは、自前のライブラリに収納。クリエイティブ・コモンズに準拠した形でオープン化し、体裁を整備
  • ウ.匿名データを、ルールに則り、機能するようオープン化することが課題
  • エ.取組当初から、データ利活用型エリアマネジメントモデルを想定しており、今年の6月に全国エリアマネジメントネットワークを構築。エリア連携WGには、データ利活用の横展開に関して、具体的な連携に対する共通の課題の意見交換を実施していくことを期待。また、データ利活用におけるルールの制定のみならず、一般の方々に理解されるような社会的な受容性の構築を主導して推進することを期待
  • オ.データ連携後に想定される課題として、エリマネに関わる人間のIoTに対するリテラシーがある。自分たちで何ができるのかアイディアを創出していくためにも、エリマネに関わる人間のIoTに対するスキルアップは重要であると思料

6.今後の進め方

  • エリア連携WGの今後の進め方は、1章-(4)今年度のWG活動に沿って実施予定

以上

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