第五回東京デジタルサービス会議 議事要旨

日時

令和4年8月22日(月)10:00~12:00

場所

オンライン開催

出席者

  • (構成員)
  • 岩﨑 尚子 早稲田大学 教授
  • 小野 和俊 株式会社クレディセゾン取締役(兼)専務執行役員CTO(兼)CIO
  • 越塚  登 東京大学大学院 教授
  • 村井  純 慶応義塾大学 教授
  • 宮坂  学 東京都CIO/副知事

当日資料

  • 資料1 行動指針のバージョンアップについて
  • 資料2 ワーキング・グループ(WG)活動状況について
  • 資料3 DXに関する海外現地調査報告について

議事次第

  • 開会
  • 議事1~3
  • 閉会

議事(敬称略)

(1)行動指針のバージョンアップについて

(事務局)

 資料1に沿って説明。

(宮坂)

 ガイドラインや行動指針を作ることは勿論、組織にどう浸透させるのかが重要である。ロードマップには数値目標を記載し、2025年までに徹底したい。ルールを守らない場合は誰がリスクを受容してシステムをリリースするのかを明確にしていきたい。

(村井)

 2025年までに100%の遵守をさせるなら徹底的にグラフで数値を管理し、目標数値に達しないものを手当てするのが良いだろう。

(越塚)

 品質指標自体は良いが、アンケートを取った後にどのような対応をするか、サービスの改善に向けどう使っていくのかが重要である。 行動規範の実践については、サービスの上流側と、下流側すなわちユーザーが接触するU字型リサーチをするとよい。普段、現場から離れている企画や戦略を担う人が現場の意見を聞いて欲しい。

(岩﨑)

 品質評価指標自体は適切と評価する。アクセシビリティについて、現状はデジタル環境が整備されていない都民もおり、インクルージョンの問題も合わせて検討する必要がある。包括指標に加え個別サービスの評価も実施するのは良い。 行動規範の実践については、数値目標を設けるとよい。

(小野)

 個別サービスの指標測定を高頻度で取るのは良いと思う。サービス提供直後であれば体験鮮度が高く、実際に感じたことが反映されやすい。一方で、あまり測定頻度が高すぎるとユーザーに嫌がられる。サービスのアップデートについて、あまり高頻度に使わない人に対しては、アンケート項目から除外するなど工夫したほうがよいだろう。 行動規範の実践について、初めの第1歩を定めることはとても重要。ただし、難易度が高いものはケアが必要だろう。例えば、#3や#5のように難易度が高そうなものについては、職員が実際に手を動かしながら体験できる研修や勉強会があってもよい。対象者が多い場合は、ボーリングピンの考え方で最初はインフルエンサーとなりえる人を対象にするのがいいだろう。また、実際に体験した人でのパネルディスカッションなどで共有するのもいい。

(村井)

 体験後に満足度を測定する場合、ユーザーが参加しやすい方法はどのようなものがあるか?

(小野)

 例えば以前見かけた事例で、海外ホテル宿泊後のアンケートメールに、笑顔、普通、怒っているマークの3択から選択するものがあった。そのどれかを選ぶと、もしお時間よろしければ、ということでより詳細なアンケートが表示される。そこで面倒だと感じて離脱する人がいても、最初の3択から何が選ばれたかは分かる。最初のハードルを低くするなど、顧客がアクションを起こしたくなる仕掛けが重要かと思う。

(岩﨑)

 高齢者などのデジタルに不慣れな方でも簡単ですぐに意思表示しやすい簡単なものがいい。

(村井)

 都庁のHPの各ページに3つの顔マークを付けて、意思表示できる仕組みを入れるのはありだろう。

(宮坂)

 都庁のHPはプレリリースの観点から感想などを電話で受けており、問い合わせフォームで受け付ける文化が未だない。ここ2年間でバラバラだったチャットボットを統合して導入したところ、最初は使い物にならなかったが段々と評価が上がってきており成功体験が創出できた。全サービスでの導入に向け、体験鮮度の高い顧客の声を聴くUIをよく考えていきたい。

(村井)

 チャットボットについては、最初はAIが対応するが、AIでは対応できない問題はオペレーターが対応する形式もやり方としてはある。

(2)ワーキング・グループ(WG)活動状況について

(事務局)

 資料2に沿って説明。

(宮坂)

 ガイドラインの中身そのものも重要だが、どう守ってもらうのか、どう徹底させるかについて、特にご意見をお伺いしたい。

(岩﨑)

 【UI/UX】Webのアクセシビリティについては、当面は徹底させていくというのが課題かと思う。インクルージョンは範囲が広いため、今すぐ全てに取組、100%達成させることは難しく、優先的に取り組むものを決めてアプローチすることが大切である。例えば、デバイスの所有率、高齢者や障者などの属性を踏まえ、そうした人たち向けのスマホ教室やサポーター拡大などの現在都が進めている取組についてはよいのではないか。

(小野)

 【データ利活用】仮説を立ててから着手するのが良い。ただし、分析のための仮説のはずが、気が付いたら仮説を立てるために分析することになってしまうケースもあるので、そうならないように気を付けてほしい。データ利活用を徹底させるためには、システム的に仕組みとして整備していくという方法もあるが、もう一つは、人間の力にフォーカスを充てる仕組みも考えられる。これは「この件は専門家に相談した方が良いのではないか」という嗅覚を働かせ、必要になったらエスカレーションできるようにしておく。民間でも、仕組みの面での整備と、嗅覚を鍛えるということとの双方のバランスを考えながら導入したりしている。

(村井)

 【データ利活用】分野を超えた視点のため、ある程度の自由度が重要であり、そのための仕組みが必要である。

(越塚)

 【ガイドライン全般】初期は特に事例が重要で“習うより、慣れろ”というところかと思う。特に、データ利活用は、事例がたくさん整理されていると良い。また、100%の徹底は理想だが完璧は難しい。ダメなものが発覚した際に、すぐ修正する仕組みを作る方が大事である。 【セキュリティ】サービスデザインと対立するところがある。利便性とセキュリティについてどう折り合いを付けるかが重要で、セキュリティの分野にこそサービスデザインの考え方を入れていくことが必要だと最近思う。

(村井)

 UI/UX、データ利活用の各局実践について、目標はあるのか?

(事務局)

 今年度の定量的目標は現状設定できていない。UI/UXは、各局からデジタルサービス局にHPの改修の依頼が来ているのでそれに取り組み、サービスデザインを実践していく。アクセシビリティは専門性が高いため、別の検討グループに分け施策を行っていく。

(村井)

 数値目標まではいかなくてよいが「こういう人たちがこういう事をできるようにしよう」くらいの目標は立てた方がいいだろう。例えば、耳が聞こえない人たちに向けて、このレベルのエッセンシャルな情報は受け取れるようにする、なぜデータ利活用が大事なのかを感じられるサービスを立ち上げるなど。 セキュリティが利便性と対立する点については、サプライサイドは安全性に倒した方が良いと考え、ユーザーサイドは便利を求め落とし穴に落ちないのが重要と考えるだろう。ユーザーが自然に落とし穴に落ちないよう誘導できるといい。

(越塚)

 アクセシビリティは具体的にやっていこうとすると専門性が高いので、検討を分けるというのはよいと思う。ただし、アクセシビリティではユニバーサルデザインが重要で、最終的には普通のHP、システムに標準的にその機能が入るべき。従って、検討は別でも最後は連携することが重要。

(村井)

 東京都の中で、アクセシビリティの専門家から意見をもらえる仕組みはあるか?

(事務局)

 WGの中では、ユーザーテストなどでアクセシビリティの観点でチェックしていくことを検討している。また、デジタル庁のアクセシビリティの部門とも連携して、デジタル庁にいる障害を持っている方などと連携できるよう検討している。

(3)DXに関する海外現地調査報告について

(宮坂)

 チームには国内に加え海外も見に行ったほうが良いと言っている。今回の報告を通じて、世界のデジタル先進都市で成功しているところは、人材・組織戦略を持っているということ。10年20年諦めずに腰を据えて継続することが重要だと感じた。

(岩﨑)

 デンマークは、過去10年の間、着実に取組を進め、デジタルランキングが10位から1位になった。KOMBITなど行政のデジタル化を強化するサポートが機能している。シンガポールもデジタル専門人材の育成やインクルージョンに熱心に取り組まれていた印象がある。東京都は日本を代表するメガ都市で、デジタル化の推進で重要な役割を担うだろう。国と東京都、また区市町村と東京都との関係の中でデジタル化の促進に向けて有機的な関係をどう築くのか。どのようにして、区市町村を取り残すことなくデジタル化の底上げをしていくかが重要と改めて認識した。区市町村とのデジタル連携では、デジタル人材需給の逼迫が続き、区市町村単体ではCIOから実務レベルまで広範にわたり人材確保が困難な状況であり、区市町村や共同でデジタル人材を使用できる仕組みを作る等、強力にサポートしていくことも一考だ。宮坂副知事のリーダーシップによるCIOとの連携は有意義である。また、東京は、高齢者や障害者、外国人など人口構成が多様性に富み、国際社会の縮図でもある。SDGSの視点も積極的に取り入れ、長期的な視点で具体的なロードマップに沿ってデジタル化を進めてほしいと思う。

(越塚)

 民間や市民も交えて、サービスのディテールの部分まで共創が機能しているならばすごいこと。ディテールを作るときは、共創のない自前主義や、業務委託になりがちである。ヨーロッパで、共創のためのルールや方法論が完備されているのだとすれば、そのノウハウは学べるところがあるし、東京都でサービスデザインをしていく上での重要なポイント。

(小野)

 自転車を電車に持ち込める、もっと歩くなどの視点は印象的だった。これはDXではなくSX(Sustainability Transformation)に近いものかと思う。そもそもの設計思想にサスティナブルの考え方があり、それをサポートするためのデジタルなのだと思った。

(村井)

 環境や教育、防災、健康増進など、社会全体で取り組めたらよいというコンセンサスのある分野。そのようなところでの何を解決するためのデジタルなのかが重要である。ビフォーデジタルでできなかったことがアフターデジタルでできるようになり、その結果、私たちの課題が解決されたというストーリーが大事。また、DXを進めるためには、今後発生する業務をどのように変えていくのかという視点と、過去に定めた法令や業務をどうやって棚卸しするかという視点が必要。 おすすめはオーストラリア。少し前の話であるが、役人がとっている電話の時間を調査し、データを使って徹底的に行政事務の改善をしたという事例があった。

(宮坂)

 東京都庁のデジタル化は加速していると思うが、区市町村を含んだ東京全体のデジタル化を進めていくことが重要。

(村井)

 LOTIやKOMBITの取組のように、東京都と区市町村でシステムや人材のシェアはできるといいが、現状では難しいのか? 特に人材が不足する分野では、人材を共有できるとよい。大学でもクロス・アポイントメント制度を設け大学同士での人材シェアを可能にしていて、行政でもそうした取組ができるといいが、難しいのか。たとえば、WGでもあったアクセシビリティやセキュリティ、データ利用など、専門的かつ新しい知識が必要とされる。こうした人材確保の難しい分野からでも取組を始められるといい。

(宮坂)

 実際に技術的にシェアができるかは確認したいが、現状、共同で活用していこうという取組はあまりできていないし、仕組みとして想定されていないこともある。人材に関しては、区市町村からのニーズも大きい。62区市町村で、まんべんなくデジタル人材を確保できるかというと難しい面もある。都庁内では、デジタルサービス局にデジタル人材を集め、各局の事案に合わせて支援を行っている。区市町村については、都区市町村CIOフォーラムなどを通じ連携を取り、関係構築に取り組んでいるところである。

(4)R4年度の活動予定について

(事務局)

 資料3に沿って説明 閉会

以上

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